大判例

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東京高等裁判所 昭和30年(ネ)2042号 判決

本件部屋を含む本件建物は、控訴人の上記認定の賃貸当時から、谷村伊右衛門の所有であり、その後京浜鋼材株式会社の所有に帰したところ、同会社は昭和二十七年九月三十日株式会社三陽に対する本件建物明渡の債務名義に基いて、本件部屋についても明渡の強制執行をなしたことは、いずれも当時者間に争がない。原審証人島崎健司、佐々木敏子の各証言及び原審と当審での控訴人及び被控訴人(当審での第一回)の各本人尋問の結果によれば、右強制執行にさいし、本件部屋にあつた株式会社丸居商店の商品その他の物件が、道路上に持ち出され、その後右会社は本件部屋を使用して、営業を継続することができなくなつたことと、本来本件部屋は株式会社三陽が谷村伊右衛門から借受けていたのを、被控訴人が株式会社三陽から右賃借権の一部を譲り受け、その後に上記認定のように、控訴人が株式会社丸居商店に賃貸していたものであることを認めることができ、外に右諸認定を動かすことのできるなんの証拠もない。

前出の甲第一号証、各その成立について争のない甲第二号証、第十六号証、第十七号証の一、二、第十八、第十九号証、乙第四号証及び原審証人岡田光雄、岡田茂憲の各証言、並びに原審(第一、二回)と当審(第一ないし第三回)での被控訴人本人尋問の結果によれば下記の諸事実を認めることができる。上記認定のように、控訴人は本件部屋を株式会社丸居商店に貸与したさい、本件部屋が控訴人の所有であるとして契約したが、その後控訴人主張のように、昭和二十六年十月三日その当時の本件部屋を含む建物の所有者である谷村伊右衛門から控訴人及び株式会社三陽を債務者として、上記建物について現状不変更の仮処分を受けたさい、被控訴人は上記建物が谷村伊右衛門の所有であることを知り、控訴人に確めたところ、控訴人は被控訴人に本件部屋を従前通使用させるよう確約したが、谷村伊右衛門に対しても賃料を支払わないで契約を解除されたのに、賃借権を確保するような処置をとらなかつた。その後上記建物の所有権が京浜鋼材株式会社に移り被控訴人主張のように、同会社から控訴人及び株式会社三陽に対し上記建物明渡の訴訟が起されたのに、それに対し十分な防禦方法を講ぜず、他方控訴人と株式会社三陽は京浜鋼材株式会に対し、上記建物の賃貸借契約存在確認並びに賃料協定の特別調停の申立をなしたが、それも間もなく取下げた。そればかりではなく、被控訴人主張のように被控訴人は株式会社三陽の取締役であつたその父に代つて、右会社の経営にも関係していたが、右会社は昭和二十七年六月十九日京浜鋼材株式会社との間に本件部屋に対する賃貸借契約を合意解約し、同年七月五日まで同会社に明渡すことを約した。それなのに、控訴人は右のような事実をすべて被控訴人に秘して、被控訴人の本件部屋に対する賃借権を確保して使用させることについて万全の処置を講じなかつたばかりではなく、被控訴人に対しても本件部屋を使用できなくなる場合に対する処置についても、予めなんらの処置と手段又は了解をも求めなかつた。右諸認定に反する原審証人佐々木敏子の証言及び原審と当審(第一、第二回)での控訴人本人尋問の結果は、上掲諸証拠に照し合わせて信用ができないし、外に上記認定を動かすことのできるなんの証拠もない。右認定の諸事実からすれば、控訴人は本件部屋を株式会社丸居商店に使用させる上段認定の契約について、賃貸人としての責任を尽したとはとうてい認めることができないから、その他の争点についての判断をなすまでもなく、上段認定のように、株式会社丸居商店が京浜鋼材株式会社から強制執行によつて本件部屋から退去させられ、営業ができなくなつたことによつて生じた損害については債務不履行による損害賠償の責任を負はなければならないものといわなければならない。

(柳川 村松 中村匡)

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